はじめに
設備管理の仕事に就いた際、現場に電気主任技術者の方がいるのを知りました。600V以上の受電設備を持つ施設では、法律で電気主任技術者の選任が義務付けられているそうで、病院に限らず、一定規模以上のビルや施設ではよく見かける存在のようです。
その方の話についていくのが、正直大変でした。ズラッと並ぶ大型の設備、その中にさらに細かい機器がいくつも入っていて、それぞれが何のために、どう動いて、建物の電気を維持しているのか。名称からして聞いたことのないものばかりで、話を聞いても頭の中で全然イメージが結びつきませんでした。帰宅してから調べ直す、ということも何度かありました。

このとき気づいたのは、求人票にある「第二種電気工事士歓迎」「尚可」という表記は、必ずしも電気工事士としての業務そのものを求めているわけではなく、電気に対する心理的なハードルがないこと、多少の知見があることを評価しているだけの場合もある、ということでした。
実際、設備管理の仕事に就いても、第二種電気工事士としての技術がそのまま業務内容になるとは限りません。「資格があれば有利」という話はよく聞きますが、その「有利さ」が具体的に何を意味するのか、実際に働いてみるまで分からなかった部分がありました。
今回は、この経験をもとに、求人票の「尚可」という表記が実際に何を意味するのか、そして設備管理の現場で本当に求められることは何かを、改めて整理してみようと思います。
「尚可」という表記が意味すること
そもそも「尚可」とは、「なくても応募できるけれど、あれば尚良い」という意味の言葉です。「必須」と違って、資格がなくても選考には進めます。
実際に転職活動をしていたとき、私は「尚可」の欄をこう捉えていました。資格がなくても仕事はできるけれど、あれば会社側も教える手間が少し省けるので、同じ条件の候補者がいたら、資格を持っている方を選びたいのだろう、と。それに、求人によっては資格手当がつくこともあり、これも地味に魅力でした。

面接でも、「第二種電気工事士も結構難しい資格ですが、よく取られましたね」というような聞かれ方をすることが多く、これは電気の実務経験そのものというより、この仕事にどれだけ本気で臨む姿勢があるかを見られているような感覚がありました。
実際、私自身が設備管理の仕事に就いた際も、担当した業務の多くは第二種電気工事士の試験範囲そのものではありませんでした。「資格を取れば、その仕事の主役になれる」というより、「資格を取るくらい本気ですよ、ということが伝わる」という側面の方が大きかったように思います。
設備管理の仕事で実際に求められること
設備管理の仕事は、まず点検が基本です。異常があれば都度責任者へ連絡し、アラームが鳴れば現場の状況を確認して原因を特定、その場で復旧できるものか、専門の業者に依頼すべきものかを判断します。
ただ、入社してまず言われたのは「今、自分がどこにいるかを把握すること」でした。大病院ということもあり、建物が複雑に入り組んでいて、電気設備だけで全体300か所ほどあるそうです。それが思いもよらない場所にあったりして、探すときに渡されるのは地図ではなく、図面でした。この図面が厄介で、廊下なのか配管なのか、パッと見ただけでは判断がつきません。これを覚えるだけでも、かなり苦労しました。

正直に言うと、この仕事の中に、第二種電気工事士としての作業は一つもありませんでした。資格が活きたのは作業内容そのものではなく、覚えることの多さに、電気への抵抗なく向き合えたことだったのかもしれません。
つまり設備管理の現場で実際に求められるのは、電気工事士としての施工技術そのものというより、複雑な建物の構造を把握する力や、異常時に冷静に判断・連携する対応力でした。第二種電気工事士は、その入り口に立つための材料の一つではあっても、仕事内容そのものとは、正直ほとんど関係がなかったというのが実感です。
資格と現場のギャップを埋めるには
今回の経験から言えるのは、「尚可」の資格を取ることと、「その仕事で通用すること」の間には、想像以上の距離があるということです。ただ正直なところ、これは試験勉強だけでは分からない部分で、実際に飛び込んでみないと見えてこないことだったとも思います。
「事前に転職エージェントを使っていれば防げたか」と聞かれると、正直、微妙なところです。エージェントが「設備管理は現場の空気が独特ですが、大丈夫ですか?」というところまで踏み込んで聞いてくれるかというと、そこまでは期待できない気がします。現場の雰囲気そのものは、結局自分の目で確かめるしかない部分だと思います。

ただ、求人の幅という点では、エージェントを使う価値はありそうです。調べてみると「建築転職」というサービスがあり、施工管理技士や建築士など、建築系技術者に特化した転職支援をしているようです。業界の実務経験がある人がアドバイザーについてくれるらしく、これまでのキャリアが今の職種と違っていても、比較的採用してもらいやすい求人を紹介してもらいやすいのではないかと思います。現場の雰囲気までは分からなくても、選択肢を効率よく広げる、という意味では使ってみる価値はありそうです。
まとめ
「尚可」という言葉の奥にある現実、ここまで自分の経験を交えて書いてきました。
伝えたいのは、電気工事士そのものの求人でない限り、実際の業務内容は電気工事士の仕事とは別物だと考えておいた方がいいということです。ただし、第二種電気工事士で身につけた電気に対する基礎知識があれば、そこから先の仕事を覚えていく上で、大きな障害になることはないと思います。むしろ、電気にまったく触れたことがない人よりは、スタートラインに立ちやすいはずです。

これから設備管理や電気工事関連の仕事を探す方には、「この資格でこの仕事ができる」という思い込みではなく、「この資格を土台に、現場で新しく覚えることの方が多い」というくらいの心構えで臨むことをおすすめします。
第二種電気工事士は、キャリアの入り口に立つための資格です。その先にどんな現場が待っているのか、リアルな情報を集めながら、一つひとつ確かめていってもらえたらと思います。
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