アメリカ留学時代のある日、今日の夕食は中華のテイクアウトにしようと、私と同じく留学していた弟が買い出しに出かけました。
しかし、いつもなら帰ってくる時間なのに、帰ってきません。
待てど待てど、帰ってこないので、これは警察に連絡する状況なのか?と思っていたら、帰ってきました。
「どうしたの?」
「事故した」
帰宅途中、交差点に差しかかった時、STOPの標識により、完全一時停車して、左右確認後、車を発進させたのだが、急に右側から車に衝突されたとのこと。
どこから現れたのか全く分からなかったとのこと。
幸い、車の前部分への衝突だったため、体にケガはなかったが、弟は顔面蒼白で、震えていました。

弟の話によると、交差点に進入する瞬間、右側の家の敷地から車がバックで出てきているのが視界に入ったが、すでにアクセルを踏んでいる状態だったので、バック中の車が次の瞬間、自分の車の右側にぶつかってくるとは、到底予測できなかった、と。
こちらからすると、相手の車がかなりの勢いでバックしてきたように感じます。バックしながらギアを切り替え、アクセルを踏んでいたのではないかと思うほどでした。
まるでこちらの車に向かって急いで突っ込んできたように感じました。しかし、ストップサインはこちら側にあるので、保険会社の説明では、こちら側の非になるとのことでした。
なぜそうなるのか、正直今でも詳しい法律の仕組みは分かっていませんが、保険会社からはそう説明を受けました。

車はレッカー移動され、事故車を一時的に置く場所に運ばれていました。
行きつけの修理屋へ連絡し、車を運んでもらいましたが、車を目にした修理屋が、よくこれでケガもなく無事でしたね、というぐらい、車の右前方が破壊されていました。
これは買い替えになるかなと思っていましたが、修理屋は、今回は直したほうがいいでしょう、とのこと。
一瞬、修理屋の商売気かなとも思いましたが、買い替えとなると、中古の市場価格で、他の車を探さないといけないなど、色々と面倒なので、修理をお願いしました。
数週間後、見事なまでに完璧に修理されて戻ってきました。

事故をした相手側への対応は、保険会社がやり取りするので、とりあえず、この事故に関しては、これで一旦終わりということになりました。
しかし、この事故から1年ほど経ったある日、保険会社から連絡がありました。
事故を起こした相手がむちうちになった、と。
知人に相談すると、「1年もたってから、むちうちなんてあるのか?」と言われました。
それで、「相手の弁護士から私のところに電話がありますが、すべて私の保険会社が対応すると言ってください」とのこと。
それを聞いて、少々緊張しました。渡米してから何年も経っていますが、法律が絡むような会話はやはり緊張します。ちょっとした発言から付け込まれる可能性があるのは、特に海外ではよくあることなので。
数日後、相手の弁護士から電話がかかってきました。
何やら、電話の向こうで一方的にまくしたててきます。
私は言われた通り「この件はすべて私の保険会社が対応いたします」と返答。
緊張のあまり、かなり声が上ずっていましたが、弁護士は「OK」と。
ただその言い方が、先に入れ知恵されたな、というような感じで、言いたいことが言えずに抑えた感じの言い方でした。

それでもさらに弁護士は何やら言ってきます。
それに対しても、私は同じように、「この件はすべて私の保険会社が対応いたします」、と返答。
それに対して弁護士も同じ言い方で「OK」。
私の馬鹿のひとつ覚え状態の「この件はすべて私の保険会社が対応いたします」という返答と、弁護士の抑圧された「OK」という返答のやり取りが何度か繰り返された後、観念したのか、弁護士は電話を切りました。
本来、こうした交渉は保険会社に言っていくものだと思うのですが、それをわざわざ私に連絡してくるということは、もしかすると、アジア人の若造なら簡単に言いくるめられると、ナメられていたのかもしれません。
保険会社から事前に助言を受けていなければ、パニックになって不用意な発言をしていたかもしれません。改めて、この国では決して気を抜いてはいけないのだと痛感しました。
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